氷帝

□目眩
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忍足に連れて来られた場所は

誰も居ない…




「何でって思てるやろ?」
「当然だろ」




保健室だった。


何で保健室なんかに…


「今日、誕生日やろ、自分」
「ああ…」
「せやからな、俺から心のこもったプレ「帰る」

俺は、Uターンして忍足に背を向け、保健室を出ようとした。

「Σちょっ…待てや!」
「誰が待つか馬鹿」


俺様が生まれたこの日に。
何するかと思ったら…保健室なんかに連れ込みやがって。

俺様を誰だと思ってやがる。

泣く子も黙る跡部景「ゴカイやって!」


ドアに手を掛けようとした時、忍足の手が、ドアに伸ばされた俺の手を掴む。
そして、俺を出すまいと、ドアの前に立ちはだかる。


「人の話…最後まで聞けや、アホ…」

空いている手で髪を掻き上げる。




その 何気ない仕草ですら
俺の心を惑わせる。




「プレゼントは俺やない。…まぁ…欲しいんやったら、なんぼでもやるけどな」

俺の手を離し、冗談とも本気とも取れるセリフを吐く。

「今回は普通のプレゼントやねんて」

“ちょお待っとき”と言って、忍足は部屋の隅へ行き、何かをし始めた。
俺がその様子を黙って見ていると、やがて何かを手にして俺の所へ戻ってきた。

「これが俺からのプレゼントや」
「──……」
「水に入れとったから、ちょお濡れとるトコあるけどな…。ここしか隠しとく場所思い付かへんかってん…」




忍足が手にしていた“物”は、小さな花束だった。


「──何でこの花なんだ?」
「バラの方が良かったん?」
「そうじゃねえ」


それは、プレゼントとしては、あまりメジャーではない花だった。




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