氷帝
□やっぱ好きやねん
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10月15日、夜。
俺は、跡部のOKもろて、こうして“お泊まり”に来た。
一緒に誕生日過ごして欲しかってん。
せやけどな。
いつもと同じやねん。
いつも通り、部屋通されて。
いつも通り、くだらん事話して。
いつも通り、跡部が本読み始めて。
いつも通り、俺はベッドに横んなって、跡部眺めて。
いつもと変わらへん。
もしかしたら、プレゼントとかケーキとか用意してくれてんのかもわからんなー…っちゅー、淡い期待…持っとってん、俺。
その淡い期待、崩れてもーた。
跡部の顔は、本に向けられたままやし。
俺の誕生日
忘れてもーたん?
こないだの跡部の誕生日ん時、
『期待して待ってな』
言うとったやんか。
もう忘れてもーたん?
『今日、俺の誕生日やで?』
そう言いたいねんけど。
ホンマに忘れとったら凹むから、言われへん。
ホンマに忘れとったら、なんや悔しいから、
自分からは言わへん。
「……おい」
「…何や?」
「さっきから何ジロジロ見てやがる」
「…別に…。跡部見とるんの好きなだけや」
「………」
その俺のセリフに返す事なく、また視線を本に移す。
俺が今言うたセリフは、嘘やない。
プラス、何かが欲しいねん、今日は。
ケーキちゃう。
プレゼントちゃう。
ただ、『おめでとう』言うて欲しいだけや。
それが一番欲しいねん。
覚えとって欲しいねん。
俺の誕生日。
早ぅ言うて…
16日なってまう前に。
†