氷帝

□花火大会奮闘記
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「景ちゃん」

「………」

「景ちゃーん」

「………」

「けぇちゃ〜んι」




花火大会も終わり、観客がゾロゾロと会場を出ていく。
俺と景ちゃんも、人の波に流されるように会場を離れる。
歩いていくにつれて、1人、また1人と、自分の家の方角へと曲がっていき、やがて人の波もまばらになる。

その間、会話は一切ない。

気まずい沈黙に耐えられなくなった俺は、景ちゃんの名前を呼ぶ。



「怒っとる?」

「別に」

「それやったら返事したってもエエやん…」


並んで歩いてくれへんし…。
俺、泣きそう。

もしものために、勝負パンツ履いてきたのに…。




………。





このまま帰すワケにはいかん。
仲直りせな…。

勝負パンツを無駄にせんためにm……いや、ちゃうやろ俺。
今は勝負パンツどうでもエエやろ俺。





「なぁ、景ちゃ「あ、侑士!!」




…………。




聞き覚えある声。
間違いないわ…

この声は……





「ジブンらも花火?」


振り返ったら、やっぱり声の主は岳人で、宍戸も一緒やった。


「…またケンカか、忍足?」

「ケンカっちゅーか…怒らした?」


「それを世間はケンカっていうんだよι」

「侑士、今度は何したんだよ?」

「隠し撮り企んでもーてな…」


俺のセリフ聞いた途端、溜め息つく宍戸。


「何だ…そんな事かよι」

「おい宍戸。そんな事って何だ?アン?」


宍戸のセリフ聞いた景ちゃんが、宍戸に食ってかかる。


「コイツに撮られたら何に使われるか分かったモンじゃねえだろうが」

「…まあ…確かにそうだけどよ…」



…少しは否定したってもエエやろ宍戸…。




「俺は今までも、コイツに隠し撮りされねえようにしてきてんだよ」


いや、俺めっちゃ隠し撮りしてんで。
スキだらけやで景ちゃん。



チッ…と舌打ちする景ちゃん。

そこへ、岳人が控えめに声を出した。



「なぁ跡部…。スゲー言いにくいんだけどさ…」

「何だ?さっさと言え」





そして岳人は、親友である俺を裏切った。






「侑士、隠し撮りしまくってるぜ…」

「………」










俺は

向こう1週間




景ちゃんに無視され続ける事になる。






†END†
2008.9.1
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