氷帝
□可愛い恋人
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気付けば、もう少しで11時になるとこやった。
「もう遅くなってもうたし、そろそろ帰るわ」
「帰るのか?」
「やって、景ちゃんかて寝なアカンやろ。明日も学校やし」
「泊まる気マンマンで来た割には、ずいぶん大人しく帰るんだな」
横に置いとったバッグを掴んどった俺は、景ちゃんの方を見て、話す。
「景ちゃん怖い夢見てもーたかと思とったからなぁ……そのつもりやったけど。せやけど、誕生日祝ってもらえたし、満足や。ホンマ楽しかったで?」
「………」
「……景ちゃん?」
景ちゃんが、フッと顔をそむけた。
「…景ちゃん…」
俺は、景ちゃんが言わんとしてる事に気付き、嬉しさから顔が緩みそうになるのを抑えて、聞いた。
「…もしかして…泊まってほしいん?」
「……違う」
そう言うた時の、一瞬の表情の変化、俺は見逃さなかった。
素直やない恋人のために、言い方を変えて、もっかい聞いてみる。
「ほな…泊まっても、エエ?」
「………」
「…アカン?」
「……勝手にしろよ」
それは、景ちゃんの
精一杯の、承諾の言葉。
「おおきに」
−−−−−−−−
広いベッドに、景ちゃんと並んで寝る。
景ちゃんの『手を出したら殴る』宣言は、ちょお残念やけど。
景ちゃんの気持ち、ホンマ嬉しかったし…まぁエエわーて思た。
俺に背中向けて寝とる景ちゃんを抱き締めて、目を閉じた。
景ちゃんも、抵抗せえへんかったし。
「…忍足…?」
「………」
どれくらい時間が過ぎたか分からへんけど…景ちゃんが俺の名前を呼んだ。
何やろー思て、次の言葉を待ったけど、俺が寝とると思たらしく『もう寝たのか…』て言うた。
しゃあないから、悪いなー思たけど、寝たフリし続けた。
「チッ……まだ言ってねえのに」
「………!?」
まだ言うてへん事って何やの景ちゃん!?
めっちゃ気になるやんか!
寝たフリせんと、何か言うたら良かったわ…!
せやけど、次に景ちゃんの口から出た言葉を聞いて、寝たフリしといて良かったーって、ホンマに思った。
「………侑士………Happy Birthday」
景ちゃん
今
何て
言うた?
めっちゃ小さい声やったけど。
何て言うた景ちゃん?
『侑士』言うた?
言うたよな?
聞き間違いちゃうよな?
妄想ちゃうよな?
「……なん「もっかい言うて」
「Σ………ッッ!!///」
めっちゃ驚いたらしい景ちゃん。
ガバッと起き上がって、俺を見下ろす。
暗闇に慣れたから、景ちゃんの顔も分かる。
こっち見て、慌てたような顔しとる。
「テメ、寝たフリしてたのかよ…!」
俺は、それには答えず、景ちゃんの手を握って、再び言う。
「もっかい、言うて?」
「……何をだよ」
「侑士て呼んで?」
「……っ…断る!!」
ハッキリ言うて、また俺に背中向けて寝、布団を被る。
「景ちゃーん」
「………」
「……まぁエエわ。1回は聞けたしな」
再び、後ろから景ちゃんを抱きしめる。
「明日、岳人達に自慢してエエ?」
「しなくていいだろ別に!///」
素直やない、ホンマは照れ屋さんな、可愛い恋人。
絶対に、離さへん。
そう、心に誓った。
†END†
2008.10.14