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□Rose of blood and contractA
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契約…
人間と吸血鬼の契約。
それは吸血鬼たちがこの偏見だらけの世界で共存する、一つの方法でもある。
まず契約は一対一で行い、吸血鬼は契約した人間の血しか飲むことが出来ない。
それを厳守しなければ、他の人間の血を飲んだ時点で吸血鬼は灰と化する。
なので契約した人間を殺すということは、その吸血鬼にとって消滅を意味した。

この方法で、吸血鬼たちは生き延びてこれた。
人間の中には「吸血鬼の脅威で人間が滅んでしまう」と思う者も必ずいて、それを説得する要因で契約が始まったと言っても過言ではない。
兎に角この契約があれば大量殺人ということは出来ない。
但し、血液の提供が必要だ、というものである。


「分かりました?」
「いや全く」
「……………」
土方の即答に、総司はため息を一つ零した。
「つまり契約した人間を私たちは殺せなくて、でも条件として人間は私たちに血を提供するんです。Do you understand me?」
「…オーケー」
本当なんでしょうね、と総司は横目遣いでじっと土方を見つめる。
どうもよく分かっていないように見えるのは、ただの気のせいか。
「じゃあ、しますか?契約」
「あぁ」
とりあえず自分の生命の保証をしなければ、と土方は内心呟いた。
まだ仕組みがよく分からない分、充分警戒する必要もある。
「私のこと殺さないで下さいね?ちゃんと血飲ませて下さいね?」
「分かってる、早くしろ」
約束ですからね。そうこぼしながら、総司は尻ポケットからクシャクシャになった紙を取り出した。
丁寧に皺を伸ばし、それを目の前に差し出す。
「ここにサインと血判を」
予め机の上にあった万年筆を手にとり、土方歳三と、ペン先を紙に滑らせた。
割とシンプルな書体に済ませ、万年筆のキャップを閉める。
「血判か…めんどくせぇな」
次に土方はカッターナイフを取り出し、左手の人差し指に刃先を突き立てた。そのままほんの少し力を加え、ぐっと数ミリ下に引く。
すると切れた指先からは、真珠の粒のように丸い赤色の雫が滴ろうとしていた。
一瞬総司の目の色が変わった気がしたが、気のせいとして土方はそのまま作業を続ける。
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