稲妻11

□ひらり、ひらり、
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ひらひらと頭上から足元に落ちていく桃色に、顔を上げた。
風が吹くたび、ふわりと舞う花びらは、太陽の光に包まれ、輝き、眩しさ故、視線を足元に落とす。
一枚、二枚と、次々と足元に落ちる花びらに、いつかの冬の日を思い出す。
その日も、この花びらのようにひとつ、ふたつと、ゆっくりと雪が地面が落ちていた。
何にも包まれず、冷たい空気に触れ続けている手を、そっと胸元まで上げて、落ちてきた雪を受け止める。
触れると、すぐにその白はじわりと消えて、水となり、手のひらを濡らしていく。
指先は寒さに耐え切れず、悲鳴を上げるかの如く、きりりと痛くて、あまりの突き刺すような痛さに、今にも指が切れて落ちてしまいそうだ。
あの日、僕はまた、一人感傷に浸っていた。一瞬にして僕を一人にした、この小さな白に、ゾクリと背筋が凍る。雪とは恐ろしいものだ。降っている時はほんの小さな固まりなのに、積もると簡単に命を消す事ができるのだから。…簡単に、僕の大切なものを消してしまうのだから。
それでも唯一、残った温もりが、あった。



そっと胸に手をあてる。


アツヤ…


あの日以来、僕の中にアツヤが生まれた。僕は一人じゃない。そう、よくアツヤに言われる。うん。僕にはアツヤがいるんだ。完璧になったんだ。僕たちは。二人で一人なのだから。

そう思っていた。でも、完璧じゃなかったんだ。だから、今の僕は、今この状態を嬉しく思えていない。雷門の皆に出会ってからだ、こんな感情が生まれたのは。
皆はアツヤを求めて僕の所にきた。アツヤの力を必要に僕をキャラバンに誘った。始めは気にも止めなかったんた。でも、でも、日が経つにつれ、僕…吹雪士郎は、皆には必要とされていない。求められているのは、吹雪敦也だ、士郎じゃない。つまり僕は皆に求められていない。存在を必要とされていないんだ。

哀しかった。すごく、哀しくてしかたなかった。

僕を一人にしなかった存在が、僕の存在を無くしていく。

そんな事実に、ひどく怖くなった。苦しくなった。

僕だって必要とされたい。僕の居場所は雷門だって、思いたい。

アツヤではなく、僕―士郎が必要だって言って欲しい。



――吹雪!


…!?


不意に耳に届いた声にいっきに現実の世界に戻された。
視界いっぱいに、桃色が舞っている。


「吹雪っ!」


もう一度、聞き慣れた声が僕を呼ぶ。声がした方へゆっくり振り向けば、雷門のキャプテン―円堂守君が、こちらに向かって大きく手を振っていた。


「…キャプテン」


返事にと、口にした言葉は、音にはならなくて、小さく口が動いただけだった。


「もう出発するってさ!行こうぜ!」


明るく口にするキャプテンに、小さく頷いた。

そしてすぐに頭を過ぎるのは、皆は僕じゃなく、アツヤを求めているという事。


…彼も、僕を呼んでるんじゃない。アツヤを呼んでいるんだということ。



痛む胸を振り払うように、僕はキャプテンのもとへ走った。





end




+++
初、イナイレ文にて吹雪の独り言(痛。

士郎、切ないよ、士郎…(ノ△`゜)

又しても誤って文を消してしまう事故がありました(しかも文頭←)

場所はきっと奈良辺りかな?奈良は桜が綺麗だったから(^O^)





 

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