稲妻11
□テスト期間の帰り道
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「キャプテン」
「あ、吹雪!」
声を掛ければ、パタパタとこちらに向かって駆けてきた。
「帰ろう」
「おう!」
ちょっと待ってて!
元居た自分の席に駆けていくと、鞄に教科書を詰めて、近くにいた友達に手を振ると、戻ってきた。
「はぁ、サッカーやりたいなぁ〜」
肩を並べて歩いていると、小さな情けない声が聞こえてきた。
「仕様がないよ。今、テスト期間だから、部活は休みだもの」
「うー…」
分かってるけどさぁ…。
今のキャプテンは、しぼんだ風船の様だ。いつもピンと立っている髪は心なしか垂れて見える。
「今回のテストで赤点採ったらサッカーやらせないって、母ちゃんが…」
はぁぁと溜め息を零すキャプテンに、苦笑い。
「キャプテン、普段テストはだいたい何点くらいなの?」
軽く問い掛けてみれば、ピクリとキャプテンが揺れた。嫌な予感がする。
「…さ、35点…くらいか…な」
言葉が終わりに近付くにつれ、視線が明後日の方向へ動いていく。あはは…と渇いた笑い声が聞こえた。
「35点って、ギリギリだよね…」
30点以下が赤点だっけと、口に出せば、キャプテンは頭を垂らした。
「オレ、どうしよう〜〜」
半泣き状態なキャプテンを横目に、それは本当に困ったなぁと、解決策を探す。僕たちは、晴れて高校生になった。中学は義務教育だから、点数が乏しくも卒業はできる。だが。高校はそうは行かない。
「サッカーやらせてもらえる、もらえないにしろ、赤点だけは避けなくてはね」
「…はい」
完全にしぼんでしまったキャプテンが、いい加減見るに堪れなくなってきた。
「僕が教えてあげようか」
「え?」
今何て?と、円らな瞳がこちらを見た。
「僕がキャプテンを助けてあげるって言ったの」
にっこり微笑めば、笑顔が返ってきた。
「あはっ!ありがとう吹雪!!」
吹雪大好き!!なんて、飛び付いてきたキャプテンを慌てて受け止める。
「ははっ。キャプテンの為なら僕は何でもするよ」
「よし!お礼に今日はオレがラーメン奢るっ!」
「ぇえっ?いいよ。それより、早く帰って勉強しようか」
「それもそうか…なら、お礼はまた今度なっ!」
ニカッと笑って僕の手を引くキャプテン。
お礼は後でちゃんと貰うから。ラーメンより美味しいのをね。
心の中で呟いた言葉の意味を、この後、キャプテンは顔を真っ赤にして知る事になるのでした。
end
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一教科ごとにお礼は取られますよ(^O^)
美味しく頂いてしまえ!←
↓補足
・吹雪と円堂は同じ高校
・でも違うクラス(吹雪がっかり←)
・吹雪が円堂恋しさに東京に越してきた(一人暮らし中)
・そして高校生になり、やっと円堂の身長をぬかした吹雪(万歳!)←