読みモノ
□落ち葉拾い 第一章
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「落ち葉拾い」
一般世間に於いてであれば、肌寒く空高い収穫の秋を思い浮かばせる季語ではあるが、この仕事に就いてからはひたすらに暗くて重い、厚い雲が空を覆う冬を連想させる言葉にしか聞こえなくなってしまった。
本物の落ち葉は土の上に落ちても大地を豊かにする腐葉土にしかならない。
それは寧ろ良いことだ。
だが、もし落ち葉がコンクリートの上に落ちてしまったならばどうだろう?
放っておけば、もし土になったとしても大地を豊かにするはずの役割は果たせなくなり、人間にとっては汚物と同等のモノに成り下がってしまう。
「相良(さがら)くん!そっちに行った!」
ふと、声がきこえて、すぐそれに対応するように手に持って準備をしていたぶ厚い古い装丁の本を開く。
「炎上捕縛!!」
叫び声と共に開いた本から炎が出て来る。
本が燃えやすいというのは自明の理であるが、本から炎が出て来るなど、一体誰が予測出来るだろう。
その炎は自分の思い描いた捕縛の方法をとってこっちに向かってきた魂(オチバ)を捉えた。
「見逃してよ!お願い!まだ子供が生きているのよ!」
「すまないが、無理な相談だ」
一々同情していたらきりがない。
それに、未だに一の階のこの鬼は生きた人間の生命力を喰らわねば己の体を維持出来ない。つまり、意志ではなく本能で生命力を喰らおうとするのだ。己が存在を継続させるために行われる至極自然な行為に於いては罪悪感もへったくれも在ったものではない。
燃えてゆく魂(オチバ)を見ていると、掌が熱くなったような気がした。