読みモノ
□三題噺
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ヒトツメ
宮本武蔵、ホットカーペット、盆踊り。
普通子供の名前を過去に名を馳せたことのある剣豪と同一の物にするだろうか。少なくともこの俺、宮本武蔵は神とか、仏とか、その他諸々のすごいものとかに誓ってそんなことは断じてしない。
ところで、今日は冬も最後の2月である。にもかかわらず、何故か我々は盆踊りをさせられている。いや、理由はあるのだが、それでも時期外れも甚だしい。
何でも小学6年生になると地元のイベントに参加して踊らなければならないので、その練習であるとか聞いている。
だが、冬は寒いし、練習は放課後なのでもうホットカーペットにでもくるまっていたい気分は山々なのであった。
それでも、俺は真面目に取り組んだ。それはもう本気の本気であったことに嘘偽りは微塵もない。
なぜなら、はたまた何の偶然か、俺と同じクラスの佐々木小次郎と言う名前の男がことあるごとに俺に張り合ってくるからだった。
もう二人の盆踊りはアホなことに、見る人に感嘆の息を漏らさせざるを得ないまで昇華させてしまっていた。最早町内で二人に並ぶ者など誰一人としていない。
ただ、そんな風に決着のつけられない戦いで、俺は負けてしまったことがある。
それは、二月一十四日、つまり、バレンタインデーの日のことであった。
あろうことか、毎年通りチョコを渡してやった時、先にあいつに告白され、俺はそれをなす術無く、しかも赤面しながら承諾してしまったのだった。
ちなみに、勘違いされると困るので言っておくが、俺は女である。