白石蔵ノ介小説企画『毒と薬。』
□瞬間、君に、Ecstasy。
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――なぁ、謙也。
あの日からずっと君に――
「謙也に初めて会うた時な、ほんま嬉しかったんや」
「何でや?いきなり」
「あぁ、コイツ…俺のこと好きになりそうやなぁって」
「何言うとんねん!先に好きになったんそっちやろ!」
「んー?どやろな?案外、謙也の方やったんとちゃうん?」
「え!?そうなん!?うーん…」
「わからんけど。謙也は初めて会うた時のこと、覚えてるんか?」
「確か蔵が声掛けてきたんやなかった?」
「せや。うっさいのがおるなぁ、思て」
「俺はエクスタシー連呼するお前に引いた覚えがあるわ…」
「最初から言うてたっけ?その辺は記憶にあらへん」
「都合ええやっちゃな。最初の一言、覚えてへん?」
「全然覚えてへんわ。声掛けたことは覚えてるんやけど。なんて言うた?」
「君の髪の色、エクスタシーやな、って」
「あぁ!せやせや。そう言うたんやったな」
「ビックリしたわ。エクスタシーって何や!?って聞き返してな」
「懐かしいわ。あの頃はお互い、何も知らんへんかったな」
「そらそうやわ。出会ったばっかやもん。まぁ、入学式の時から俺は蔵のこと知っとったけど」
「嘘?そうやったん?」
「せやせや。蔵は知らんと思うわ。俺が一方的に知ってただけやから」
「そうなん?」
「蔵、目立ってたからな」
「なんかしたんやっけ?俺」
「見た目や。カッコええ子おるって目立ってた」
「あぁ、そういうことか。そんなん俺が知るわけあらへんな」