白石蔵ノ介小説企画『毒と薬。』
□ずっと、きっと。
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心が痛いと気付いた。ズキン、と。
理由など考える間もなくわかる。
「彼のこと」
好きになってしまった。
そんな表現がぴったりと当てはまるような恋。
いや、恋とも呼べないような何か。
好きになってはいけないと、好きになるべきではないと、わかっていたのに。
「はぁ」
思わずため息が零れる。
俺と彼の距離があまりにも、あまりにも。
「届くんかなぁ」
手を伸ばせば宙を掴むだけ。
この手がいつか彼の腕を掴むことなどあるのだろうか?
期待して、自己嫌悪。
彼が好きなのは俺じゃない。
だから期待など無意味。
わかってる、わかってる。
「こんなことなら…」
出会いたくなどなかった。
声など掛けて欲しくなかった。
何故、彼はあの時俺に声を掛けて、笑顔を見せてくれたのだろう。
彼には大好きな人がいるのに、何故。
あの時、声を掛けられなければ、彼のことなど知らずに済んだのに。