白石蔵ノ介小説企画『毒と薬。』

□白石蔵ノ介的視点。
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「なんやこれ?」


渡されたものを受け取る。
それは紙に字が書いてあるもので、所謂。


「あぁ、手紙か」


コクリと頷いたのを見てから手元にある手紙を見た。
封筒から中身を取り出すと、そこには丁寧な字で言葉が綴られていた。
最初の数行を読んで、その手紙が何かを理解した。

つまり、それは。



「これ、ラブレターやん」



顔を真っ赤にしたその子はうつ向いて何も答えなかったけれど、肯定と捉えていいと思う。

何故ならその手紙には分かりやすく「好きです」と書いてあったから。



「アカンわ…」



俺の呟きにその子はビクッと身体を震わせた。

断られることに怯えたのか、沈んだ顔をして更に俯いてしまった。



「あぁ、ちゃう!ちゃうんねんって。俺がアカン、言うたのは…そういう意味とちゃうねんって」



こんな時に言うたらアカン、という意味だったのだけれど。
それを説明したらその時点で言ってしまうことになるから言えない。

心の中で思ったのは『手紙を直接渡す勇気があるんやったら自分で言うたらええのに』ってことだった。

大阪人としてはとても突っ込みたいところだったけれど、流石にこれをはっきり言う程俺は馬鹿じゃない。



そもそもこの手紙自体、必要はないと思うのだけれど。
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