白石蔵ノ介小説企画『毒と薬。』
□翼の生えた、飛ばない鳥。
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「何処にも行かんで?俺の傍におって?」
自由を奪って、俺を縛って、全てを欲しがって。
救いようがないぐらい嫉妬心が強くて自己中心的。
俺への迷惑も考えず、自分の気持ちだけを身勝手に押しつける。
「その手もその瞳もその身体も――全部、俺のもんやで?」
悪気など一切なさそうに、にこりと笑って言う。
その目は鋭く光っているということを俺は見逃さない。
絶対に俺を逃がさない、という――瞳。
「なぁ、わかってる?」
甘い声で、冷たい瞳で俺を捕える。
思わず目を逸らしたくなるけれど、視線はどうしても逸らせない。
じっと目線を交わし合う。
「誰にも、あげへん」
ぎゅっと音がするぐらい強く俺を抱きしめる。
いつも通り、いつもの流れ、いつもこのパターン。
瞳で捉えて、身体で縛るのがこの人のやり方。
「絶対に、あげへん」
抱きしめられた拍子に、ぶわっと甘い香りがした。
何の香りかはわからないけれど、抱きしめられるといつもこの香りがする。
それに安心してしまうのは、この人の罠かもしれない。