白石蔵ノ介小説企画『毒と薬。』

□空も風も僕も君も。
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蔵が「にゃー」って鳴いた。
俺の幻聴でも何でもなくて、本当に蔵がそう言った。


「猫、好きやねん」


そう言って蔵は道の端に行って、猫と戯れ始めた。
どうやら「にゃー」で会話してるらしい。
俺には全く理解できないけど、きっとうちのイグアナと俺が喋ってる時と同じ感じだろうと思う。


「この後、どうする?」


俺よりも猫と遊ぶ方が楽しいように見える蔵に、俺はあえて大声で聞いた。
小さな嫉妬。
けれど蔵は笑ってこっちを向いてくれた。


「美味しいもの食べて、公園でお昼寝」


いつものパターン。
蔵がそう答えることなんて分かってた。
けれどいつも聞きたくなる。
何故なら、こう答える時の蔵がとても幸せそうだから。


「了解」


ビシッと額に手を当てると、蔵は笑ってくれた。
蔵の笑顔が大好きだから、いつも笑ってて欲しい。
俺の隣にいるときの蔵は笑ってることが多くて嬉しい。
蔵が嬉しければ俺も嬉しいから。


「ほな、行こか」


名残惜しそうに猫と別れ、手を振る。
そんな仕草すら可愛いと思ってしまうのは、惚れてる俺だからかどうなのか。
俺には蔵の全てが可愛くて綺麗だと思えるから、他の奴もそうなんじゃないかと思ってる。
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