四天宝寺(短編)
□この手が貴方を傷つけて。
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振り返ったらその場にもう光はいなかった。
「……」
ああ、嫌になる。
何を期待したんだろう。
自分が告げたはずなのに。
自分で終止符を打ったはずなのに。
「わざわざこの日に、な」
7月20日――光の誕生日。
大好きな人の大切な日。
出会った時からずっと光が好きだった。
当たり前のように思いを告げて、それを受け入れてくれて。
――幸せだった。
あの頃、俺たちは確かに幸せで、これ以上の幸福はないと信じていた。
「何で涙がこぼれたんやろ?」
終わりにすることは決めていた。
少し前から、ずっと。
そして先程告げて、泣いて。