四天宝寺(短編)

□鎖を繋げて、傍にいて。
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「何処にも行かんといて」

「俺の傍におって」


何度も君を縛る台詞を吐いた。
その度に君は笑って――そう、苦笑いして俺に言う。


「もっと俺を信じてくれてよかとよ?」


そう言って俺から離れて、何処かに、何処かに。

俺はいつも君がいなくなった部屋で思う。

君が何処へ行ったのか、何をしてるのか、誰と会ってるのか。


考えて嫌になる。


俺以外の人と会っていることが嫌。
俺以外の人に笑顔を見せてることが嫌。
俺以外の人と関わってることが嫌。


底なしの嫉妬深さ――自分でも理解している。

でも変えられない。
そう思わずにはいられない。



「ねぇ、ちぃ。何処にも行かんといて?」



取られるのが嫌だ。
捨てられるのが嫌だ。
君じゃないと嫌だ。


たくさんたくさん君を想ってる。
君しか見えてない。


でもそれは俺だけの思い。

俺がどれだけそう思っても君は何処かへ行くし、誰かに会う。

その度に俺は醜いぐらい嫉妬して、馬鹿みたいに苛々してる。

「信じて」と君は言うけれど、そういう問題じゃない。

俺は君を信じてる。
君のことを疑ってるわけじゃない。

君が俺以外の誰かを好きになったらどうしよう、なんて考えてない。

ただ、俺はとにかく自分に自信がない。
自分に自信がないから嫉妬する。

全てをネガティブに捉えてしまう自分がいる。


俺よりいい人は絶対にたくさんいる。
君のことを信じていてもそれは事実。


君の気持ちが揺らがなくても、俺は君がそれに気づいてしまうことすら嫌だ。


俺より素敵な人に会って欲しくない。
俺だけ知っててくれればいいから。

本当はずっと俺の傍にいて欲しいんだ。
俺だけを見てればいいのにって思う。


どんなに小さな世界になってもいい。
2人でいれれば幸せだから。
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