四天宝寺(長編)

□Please,please...don't forget me,forever...
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「初めまして。財前光くん」
――あぁ、本当に…忘れてしもたんやな。














ぱっと見た時の印象はカッコ良い人。
それから優しい人だと思って、凄い人だと思うようになった。
何で気にし始めたのかはわからないけど、気付いた時には手遅れだった。

「スキ」

声に出して言えば恥ずかしいくらい的を射ていて、一人で照れた。

けれどそれがぴったりはまってる気がした。自分は彼を好きになるべきだったかのように。
あまりに当てはまってしまう言葉を見つけ、自然と笑顔になる。

「らしくない」なんて思うけれど、想いが変えられないのも事実。

あっという間に気になって、あっという間に恋に落ちた。

彼のことが好きで好きで仕方なくなった――異常なぐらい。

姿を見れれば嬉しくて、話し掛けてもらえれば幸せで。
視界に映れれば幸せで、目を見てもらえれば嬉しくて。

俺の全ては彼次第と言っても過言ではなかった。
毎日彼のことを考えれば幸せだった。




――まさか彼の頭の中から俺だけが抜け落ち
るだなんて思ってもみなかった。




7月28日、晴天。

夏休みに入ってから毎日のようにあった部活が珍しくなく、久々に丸一日休日だった。
することもなかった俺は、適当に外を歩こうと思い、昼過ぎに出かけた。

音楽を聞きながら一人で歩くのも悪くない。

閑静な住宅街から賑わった通りへ出る。

「ん?」

見かけたのは偶然だった。
あれ程背が高くて特徴のある先輩を見間違うはずがない。

ぽつんと一人で何かを待っているかのように立っていた。
こちらに気付いた様子もなかったので、気付かないフリをして通り過ぎようとしたところで目が合った。

「財前」

軽く手を上げられ、俺は仕方なく先輩の方へ向かった。

「あ、ども。千歳先輩…奇遇っすね」

「さっき謙也にも会ったとよ。大体みんな同じところにいるばいね」

苦笑する千歳先輩は、ぽんと俺の頭の上に手を置いた。
それを振り払いながら返す。

「…そういうもんっすよね。特に行く場所もないし」

「そうばいね。急に休みって言われても何処も思いつかんばいね」
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