白石蔵ノ介小説企画『毒と薬。』
□幸福のカタチ。
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2人が同時に幸せになれるなんて、それ程嬉しいことはあらへん。
あの日の約束がこないな形で叶うとは思ってへんかった。
『いつかお前らに絶対、幸せやって言わせたる』
あの日――試合に負けた日。
落ち込んだ2人を励ますように告げた“約束”。
少しでも役に立ちたかった。
笑顔にしたかった。
2人の気持ちを知っていた分、余計にそう思った。
「せやけど…結局俺は何もしてへんな。2人が通じ合っただけや」
俺がしたことと言えば励ますことと、2人きりにさせたことぐらい。
ただそれだけやのに。
「蔵のおかげやわ。おおきに!ほんまに俺ら、幸せになれたで!」
謙也がそう言ってくれた時、涙が出そうになった。
大切な人の役に立てることがこんなにも幸せなことだったなんて。
「俺の方こそ…おおきに、謙也」
さぁ、新しいストーリー――俺も始めよか?