白石蔵ノ介小説企画『毒と薬。』
□翼の生えた、飛ばない鳥。
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「ひとつの生き甲斐」
抱きしめられたまま、その声を聞き続ける。
甘い香りに甘い声。
それが毒だと気付かない内に毒牙にかかる。
「代わりなんてない」
俺はきっともう手遅れだ。
自由に生きたい。自由でいたい。縛られたくなどない。
そう思ってはいるけれど。
「死ぬまで離すわけ、ないやろ?」
嬉しそうに俺の耳元で囁くこの人を離したくなどないから。
だから俺は今日も明日も――これからずっと。
今までも、これからも。
「死んでも、離さへんで?」
ずっと、白石蔵ノ介を愛し続けるんだろう。
それは――そう、俺が白石蔵ノ介を愛してるから。
嫉妬深くて自己中心的で救いようのないこの人を――愛してるから。
「な、光」
ああ、もう。
その声で名前を呼ばないで。
「自由など、いらない」と思ってしまうから――。