白石蔵ノ介小説企画『毒と薬。』
□絶対に、涙は。
2ページ/3ページ
その時やっと気付いた――いや、思い出した。
自分は1人で生きていたんじゃないということを。
苦しいって思うだけで何もしなかったのは自分の方。
辛いって感じるだけで何も言わなかったのは自分の方。
自分が勝手に塞ぎこんで、誰にも言えずにいた、それだけ。
「周りが分かってくれない」と苛立って、分かってほしいと苛立って。
何も言わずに伝わるわけがない。
俺がしていたことは子供みたいに待ってるだけだった。
泣いて、それに気付くことが出来た。
「辛いねん…もう嫌やねん。何でこないなことせなあかんの?何でこないな思いしてまでせなあかんの?嫌や、嫌や…。俺はもっと…」
愚痴吐いて、涙をボロボロ流して。
ダサい自分見せるのが嫌で嫌で仕方なかったのだけれど。
一度吐けば、泣けば、止まらなくなる。
吐きだせるだけ吐いて、涙が枯れるまで泣いた。
それまで何も言わずに俺の言葉を聞いてくれていた、彼が。
彼の素直な言葉が。
「ずっと頑張ってきたこと、知ってる。支えにはなってやれんけど、手ぐらい握れるとよ?」
――俺を救ってくれた。
きっと俺を助けたかった。
でも俺に泣いて欲しかった。
素直になれない俺に、素直になれる場を作ってくれた。
気付いたら俺、支えられてた。
――限界の向こうがこんなにも眩しい場所だとは、思わなかった。