□答えは昔から知っていました
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全力で走っていた。
何も気にならなかった。
ただ走ることに集中していて、何処を走っているのかさえわからないままに。
人気が完全に無い、薄暗い処で漸く足を止めた。
弾む息を整えないまま、その場にしゃがみ込む。

「(気持ち悪いっ…!)」

己が所属するチーム以外との接触に、会話に、交流に。
どうしようもない程の嫌悪感を覚える、自分が一番気持ちが悪い。
悪い子達じゃないのに。
皆、嫌いじゃないのに。
何故『嫌だ』と思うのか、わからなかった。

「(何故?)」

ぐるぐると気分が悪くなる。
胸を押さえ付けるけれど治まらない。
これは、なに?

「(いきなり、こんな、)」

…いきなり?
はっと目を瞠る。
緩慢に顔を上げれば、怖い程の夕闇空が視界を埋め尽くして。

「え…、――?」

涙が、溢れた。

「な、…っどう、し…!」

本当は。
そう、本当は、いきなりなんかじゃ、ない。

「…あ、ぅ――ふっ…!」

自分の体をきつく抱き締める。
指が腕に食い込んで痛い、けど、今はそれが良かった。
鳴咽は口許を押し付けた腕に消える。

「、…!――っ」

本当、は。
大分前から、いつもいつも、心のどこかでチームメイト以外の存在を邪険にしていた。
早くこの場から離れてアイシーと会いたい、早く会話を終わらせてリオーネと話したい、早く接触を終わらせてガゼルさんに抱き着きたい。
あなた達と交流するくらいなら、ベルガ達と一緒にいたい、と。

「…。…ぅ、ふふっ…!」

唇が歪に弧を描いた。
泣いたまま、笑う。

「(馬鹿みたい…)」

簡単なことじゃないか。
昔から、自分のそういう素質は知っていたのだから。
涙を瞳に溜めたまま眉を少し顰めさせ歪に笑うクララを見て、偶然通り掛かったフロストは無言でその頭を撫でた。
突然の温もりに過剰に肩を震わせ、少しだけ目を瞠る。
それで――

「…っ、」

ひくっ、と喉が攣った。
感情の漣が大きな波になる。
また、視界が揺れた。



答えは昔から知っていました
(ただ、それを押し殺していただけ)(限界がきた、だけ)
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