２
□悪夢から覚めて
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夢なら覚めて欲しかった。
だから夢から覚めた。
開けた視界は薄暗くて、でもその真ん中にいたのは一角で。
怪訝そうな顔の彼は、あたしの目に掛かった前髪をそっと横に払った。
「魘されてたぞ、」
大丈夫か？
尋ねる声があんまりにも優しくて、涙腺が一気に崩壊する。
「いっ、かく…！」
どうした？と訊かれる前に腕を目一杯伸ばした。
ベッドから転げ落ちるようにして無我夢中に抱き着く。
縺れた足が蹴ろうとして絡まったシーツの感触は現実を認識させた。
「愛、」
慌てて受け止めてくれた一角がぎゅっと抱っこしてくれる。
「だまって、」
肩におでこをくっつけながら言えば途端に口を閉じて、首に張り付いて欝陶しい髪を背中に流してくれた。
ごめんねと心の中で呟く。
「こわいゆめ、みたの、」
「ああ、」
「それだけっ…」
舌ったらずに言えば、少しの沈黙。
時計の針の音と、一角があたしの背中を摩る音と、遠くから聞こえる皆の話し声に安心して、涙が中々止まらない。
「愛、」
「…な、に…っ、」
「怖い夢は他人に話すと現実にはならないぞ」
あ、それ聞いたことある。
「っ…あの、ね？」
「ああ」
まだ泣いたままつっかえつっかえに話すあたしを急かさないで、一角は全部聞いてくれた。
ゆっくり、鳴咽とかで言いづらかったけど、何とか話し終わる。
は、と浅く息を吐いたあたしは、身じろいで一角と向き合う形に体勢を変えた。
話してちょっとスッキリした気分。
これで夢が夢のまま、現実にならなかったら噂は本当って事よね。
「…一角、」
「ん？」
「ありが、と」
自分では自然に笑えたつもりのあたしの笑顔は、多分結構不細工だったんだと思う。
一角はぷっと吹き出して、涙とかでぐしゃぐしゃのあたしの顔を綺麗に拭いてから、頭を撫でてくれた。
悪夢から覚めて
（初めて夕方に寝ちゃったから見たのかな…）（さぁな。ほら、晩飯行くぞ）