□口は災いの元
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昼休み。
ちょっとした用事で教室へ戻ると、名前は知らないクラスメイト四名が窓から校庭を見下ろしていた。
結構音を立てているにも関わらず、興味が無いのか話すのに夢中なのか、四人は私を振り返らない。
席の椅子を引いた私は、けれどその会話に出てきた見知った名前に動きを止めた。
耳を澄ます。
確かに行儀は悪いが、盗み聞きの何が悪い。聞かれる方が悪いだろう。
寧ろこの大きさでは聞こえないという方がおかしい。

「   」
「    」

ちらりと下を見遣った先にはあいつらの姿が。
あいつらを指差しながらせせら笑う奴らの顔は非常に醜く、不愉快だった。

お前らがあいつらの何を語る?

気が付けばというか、まぁ反射的にというか。
手と足、ついでに氷が出ていた。
邪魔だから重ねた奴らの体はパッと見満身創痍。
特に顔が酷いが、自業自得なので同情の余地は無い。
時折漏れる呻きに弱いなと思い、ふんと鼻で笑ってやる。
すると私に踏まれている一人が顔を上げ、目だけで私を睨んだ。

(まだ意識があるのか)

今の立場的に言えば強者である私を睨むその根性は認めてやろう。
つい魔が差して、らしくなくにっこりと笑えば、そいつは失礼にも顔色を蒼白にさせ、途端に意識を飛ばした。
何だ、ただ少し時間を要しただけか。つまらん。
興醒めして、勿論保健室へ運んでやる筈もなく放置を決め込み、窓から校庭を覗けば。

「あっ風介ー!」
「お前暇ならこっち来いよ!」

私に気付いた馬鹿共が満面の笑みを浮かべて腕を振ってくる。
こっちの気も知らないで…全く呑気なことだ。
はぁ、とこれ見よがしに溜息を吐けば晴矢が文句を垂れる。
うるさい。
仕方なく教室から出た。



口は災いの元
(ね、五回の内、円堂くんから何点取れるか、ゲームしようよ)(因みに最下位は勝った奴全員のジュース奢りで!)(ふん…なら晴矢、財布の心配をしておけ)
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