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□鮮やかな彩り
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自然に、けれど整えられた広い中庭。
日差しはそんなに熱くなくて、肌を爽やかな風が撫でる。
視界に入った樹には二羽の小鳥が羽を休めていた。
雄と雌、夫婦だろうか。
美しい声で囀っている仲睦ましいその光景は微笑ましい。
ふと、辺りに人がいないのを確認して、仮面を外す。
何となく、空を一人仰ぎ見た。
一面の、真っ青。
怖いくらい、綺麗な。
あの人とは微かに違う、けれど似ている彩。

「――…墜ちてきそう」

そんな気がして、手を翳す。
指の間から差す光は眩しすぎて、そっと瞳を鎖した。
雲が欲しい、そう思う。
でないと、勘違いしてしまいそうだ。
空に手が届く訳などないのに。

「………」

深く息を吸う。
体に満ちて巡る冷涼な空気。
ゆっくりと吐けば、頭の中はすっきりしていた。

「おーい!出来たぞー!」

聞こえてきたブロウの声に踵を返す。
向かうは談話室。
気分が乗らなくて、飾り付けしないってフロストに言ったけれど…彼なら飾り付け無しでも素敵なデザートを作れるから。
楽しみだ、今日は何だろう。
嵌めた仮面の下、自然と微笑が零れていた。



鮮やかな彩り
(今の心は何色?)(さぁ、ころころ変わるから分からない)
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