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□S?いえいえ愛故です
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「嘘だろ」
「ん」
「嘘!?」

バーンの指摘に頷く、全く悪気の無さ気な無表情に、アイシーは半泣きでぽかぽかと叩いて責めた。
しかしその力はかなり弱い為、叩くというより勢いよく触れているという方が正しいか。

「本当に怖かったんですよもー!」

ぎゅーっと抱き着きガゼルの体にぐりぐりと頭を押し付ければ、済まないと撫でられた。
何故そこで抱き着く。
バーンのツッコミは至極正しい。

「もうやらないから、」

宥める柔らかな声にむう、と押し黙る。
いつもこれで誤魔化され、最終的には許してしまうのだ。
けれど、今回は流されたくない。
キッ!と顔を上げ端正な貌を睨み付けた。

「ガゼル様!」
「ん、」
「ガゼル様なんてっ…」
「………」
「………」

きょとん、と己を映す蒼。

「………」
「………」

冷や汗が背筋を伝う。

「………」
「…っ!」

やっぱり言えない…!とアイシーは内心項垂れた。

「(ガゼル様なんて、ガゼル様なんてっ…!――…大好きですよもう!)」

こんな事をされても、嫌いと言えない自分が悔しいくも当然だと胸を張れる。

「うー…!」

悔しげに唸る彼女は知らない。
死角の頭上にて、ガゼルがふっと妖艶に微笑んだことに。
そして、その笑みを見たバーンが口元を引き攣らせたことにも。



S?いえいえ愛故です
(ふふ、やはり悔しがるアイシーも可愛いな)(こんなのに好かれて苦労してんな、アイシー…!)
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