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□希う
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“鬼道有人”という彼は、変わった。
外面的にも、内面的にも。
勿論変わっていない部分も有るが、やはり変わったとしか言いようがない。
例えば。

視界の先で青が翻る。
初めは赤だった、その背に従い靡くもの。
それは時にすっぽりと体を包み込み、時に覆い隠してしまうもの。
ある日を境に彩を変え、けれどその存在理由は変わらない、もの。

雰囲気。
孤高の名に恥じぬ気高さ。
皇帝に相応しき誇り高さ。
それこそ未だ変わらない。
が、それらに甘くはない優しさが孕み。
鋭利な棘の数が少なくなって。

不敵な表情。
ちらりちらり、年相応の感情を滲ませた、楽しげな表情。
あの頃の冷酷な表情はもう見る事が叶わない、と思う。

それが良いことなのか、悪いことなのか。
解らないけれど。
ただ“鬼道有人”という彼が幸せならばと。



希う
(あの頃へ戻ることが出来るか否か)(なんて、問えやしない)
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