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□のんびりと
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少し気温の高い昼下がり。
河川敷のフィールドで走り回る円堂達を眺めながら、影野と涼野はぼーっとしていた。
夏を過ぎたと言っても秋の初め。
まだまだ暑さは残っている。
サッカーに関しては完璧主義とはいえ、暑さが嫌いな涼野は数分やった後早々にベンチへ。
ゆったりと時間を潰す。
興味の対象以外にはとことん無気力なのが、サッカーでの時との差を上手く釣り合わせているのだ。

「(…あつい)」

水分補給だと言い訳しながら、冷たいスポーツドリンクをちびちび飲んでいく。
体内を流れる冷えた感覚が密かなお気に入りだ。
徐々に琥珀が空を染め始めている夕刻。
川の水面が淡く強くきらきらと煌めいていた。
背中の緩い温もりに凭れ、うとうと微睡む。
背凭れが無いベンチはその代わり広く、少し詰めれば子供二人は寝転べるだろう。
其処で、二人は特に会話するまでも無く過ごしていた。
日差しは影野に直射していて、背中合わせの涼野は日陰の涼しさを満喫中。
甘やかしてもらっているという自覚はある。
でも相手が拒絶しない限り止められそうにない。
そう思って、小さく小さく笑う。
瞳を僅かに細め、唇をほんの少し緩めるだけのそれはふんわりと柔らかい。
必要以上に賑やかな雷門の中で、影野と涼野は一緒にいても苦じゃないとお互い思っている。
寧ろ心地好いというか気楽というか。
涼野にとって影野の体温は低めで傍にいても暑くないし、影野は寒さに強い為、常に冷温漂わす涼野の傍にいても平気だから。
とにかくそんな理由も含め、涼野が雷門へ来てから二人はほぼ一緒にいた。
そんなほのぼのとした空間を、突如壊す大声。

「おーい!風介ー!」

ゆるりと視線を巡らす。
視線の先、南雲が手を振り此方へ来いとジェスチャーしていた。
その隣でヒロトもにこにこと待っている。

「………」

気怠げにゆったり立ち上がった。
退屈で面倒くさい、と瞳の蒼が露骨に細まる。
一連の仕草は不機嫌な証拠。
背中の温もりが無くなって一抹の寂しさを覚えつつ、影野は思った。

…南雲、怪我するんだろうな…。

そんな昼下がり。



のんびりと
(お互いマイペースで)(何故かかみ合っている)
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