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□つらら
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ぎゅう、と抱き合う。
ぴとりと頬をくっつけ、一度頬だけ離して。
一拍の静寂。
今度は微かにすり寄せる。
重ね合わせた肌を感じ合い、数秒。
満足したのか、あっさりと離れた。
にこり、微笑み合う。

「ふふ、ありがと!」
「此方こそ」
「行く?」
「ええ」

腕を絡め、手を繋ぎ、行く先は残る女子チームメイトの許だ。

「同じよね?」
「同じでしょう?」

疑問符なんて必要の無い会話。
顔を見合わせ、ふ、と笑う。
先程確かめ合った互いの温もり。
感じた、止むことのない鈍い痛みに、人知れず陰る瞳。
その理由は、本人達が一番良く分かっている。

「…仕方ないわ」
「…うん」

あの日、悲しみは乗り越えた。
それでも、やっぱり一抹の寂しさを感じないなんてことは無くて。
見慣れた“景色”が無いことが、ちょっと寂しかった。
それだけ。



つらら
(一心同体のその冷たさと硬さと鋭さは、)(貴方がいないだけでこんなにも脆く柔く溶けた)
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