ss

□誰が…!
1ページ/2ページ


「ダメよ」

かつん。
アスファルトに短く音を響かせ、一歩近付く。
床に座り込んでいる朱色へ。

「ガゼル様はわたし達ダイヤモンドダストのものであり、わたし達ダイヤモンドダストもガゼル様のもの」

貴女が入る隙間なんて無いわ。
淡々と言い切ったクララ。
けれどレアンは何故かへぇ、と気丈に笑った。

「“わたしの”じゃなくて“わたし達の”なんだ」

その言葉にクララはつい、と瞳を細める。
見下ろすダークグレーのそれは、正しく凍えるような冷たさを孕んでいた。
ぞくり、嫌な冷や汗が背筋を伝う。
それを悟らせないのは、流石あのバーンのチームメイトと言えるだろうか。
何処までも負けず嫌い。
弱みを見せるなんて以ての外だ。

「もう一度言ってあげましょう」

くるり。
背を向けて、放つ言の葉。
曖昧さなんて無い。
痛く鋭く、突き付ける。
これは最終警告だ。

「諦めることね」

もう、レアンの返事を聞くつもりは無い。
ただ只管に冷めた態度で、動作で、仕草で。
此方の用は済んだと、今度は音も無く去って行った。

「………」

残されたレアンは、無表情。
ギリ、と握り締められた拳は、未だ解かれない。
青と白のユニフォームが消えた空間を睨み据える。
はんっ、と挑発的に嘲笑った。



誰が…!
(負けるものか)(絶対に、勝ち取ってやる)
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ