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□ぎゃあああ!
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基「ねえねえ円堂くん、」
円「ん?」

ちょんちょん、と円堂の肩を人差し指で突く基山。
ぐるりと顔だけ振り返った円堂は首を傾げた。

円「何だー?ヒロト」
基「七不思議、ってなあに?」
円「へ?七不思議?」

無邪気に問われたそれに益々首を傾ける。

風「知らないのか?」
基「うん。さっきクラスの子達が話してて、初めて聞いたんだけど…」
豪「それは珍しいな」
鬼「基山が知らないとなると、涼野や南雲もか?」
南「ああ、知んねぇな」

頷く南雲の横で、ひとつ瞬いた涼野はぽつりと小さく呟く。

涼「…私は知ってる」
基「え?風介は知ってるの?」
涼「昔、アイキューが教えてくれた」
南「ああ、あの眼鏡やrあだっ」
涼「……………」
南「いってぇ…何すんだよ!」
涼「……………」

アイキューのことを眼鏡野郎と言いかけ、涼野に殴られた南雲。
涼野の瞳は不機嫌そうに細められている。
チームメイトへの呼称が許せないらしい。
何をする、と怒鳴られても無言で南雲を睨んだ。

南「…あ、いや、…〜〜っ!…っ悪かったよ!」
涼「……ん」

無言の責めに口籠った南雲は、やけくそ気味に謝罪の言葉を言う。
暫しの沈黙後、こくりと頷いた涼野。
そんな涼野に風丸は、怒ると怖いんだな、と小声で呟いた。
同意したのはゲームをしていた半田である。

円「えっとな、七不思議っていうのは、………」
風「…円堂ι」
豪「…鬼道、」

説明しようとして言葉に詰まった円堂に、風丸他数名が呆れたように見た。
基山筆頭に南雲と涼野はそんな円堂を不思議そうな目で見るだけだ。
見兼ねた豪炎寺が助っ人の名を静かに呼ぶ。
鬼道ははぁ、と溜息を吐いた。

鬼「…七不思議というのは、ある地域や場所に於いて起こる七つの不思議且つ怪異な現象のことだ」
南「七つの不思議現象?」
基「例えば?」
風「そうだな…。その日は誰も、勿論教師も触ってないのに、人体模型のやつが翌朝になると位置が違ってたり」
豪「理科実験室のな、」
円「そうそう、理科の教室は七不思議に外せないよなー」
鬼「夜中に何処からか聞こえてきて、音源を辿った先には勝手に曲を奏でるピアノが、とか、人数ぴったりにしか無い筈の席が一つ増えていたり、開かずの扉というのも有るぞ」
半「屋上への階段、ってのも有るよな」
壁「階段のは定番っスよね〜」
基「そうなんだ?」
風「ああ、普段とは段数が違うとかさ、」
鬼「これも一段増えてるとかだったか…」
南「へぇ〜」
涼「色々有るものだな…」
半「エイリアには無いのか?」

それにきょとんと瞳を瞬かせた。

基「え?」
涼「無いって…」
南「七不思議がか?」
円「ああ!」
「「「………」」」

大きく頷いた円堂に、三人はそれぞれ思考を巡らす。

南「…あ。あれはどうだ?」
基「あれ?」
涼「………」
南「何かさ、いつの間にか壊れてただろ」
基「…ああ!そうそう、確か切り傷が有ったよね!」
壁「切り傷っスか?」
基「うん。内部の警備ロボットを全部統括してる警備ロボット――あ、名前はボットって云うんだけど、」
風&豪「「…。――ボット…?」」

知らず口に出し繰り返した、名前――らしき呼称。
南雲と涼野がふいっと視線を逸らし、基山は「ネーミングセンスは気にしないでね!」と何でもない風に笑った。

基「で、そのボットの胴体に大きな切り傷が有ったんだ〜」
涼「…まるで刀にでも斬られたような切り傷だったな…」
南「うちに刀なんて無いのにな〜。学園に有る全ての刃物とは切り傷が合わねぇし」
円「へぇ〜。確かに不思議だな!」
鬼「不思議というより危ないんじゃないか?」
基「大丈夫大丈夫!」
南「調べて貰ったけどよ、不審者とかはいなかったしな。何も盗まれてねぇし」
涼「先ず誰かが侵入したという形跡も無かった。…まぁ、そういう問題じゃないとは解っているが」

怪異な七不思議はそれだけかな、と基山が緩く首を傾げる。
怪異な七不思議、は。
つまり怪異じゃない七不思議は有るってことか。
そもそも一つだけなら七不思議じゃない。
そう思ってもお口にチャック。
何か訊いてはいけない気がする。
ふいに風丸が声を上げた。

風「あ、此処だよ此処」
基「えー?」
半「この扉さ、普段かっちり閉まってんだよ。鍵は校長しか持ってないんだ。スペアもマスターキーにも付けてないしさ、」

半田は閉まってるのを確証する為、ノブに手を掛けて、

半「校長も鍵失くしたって言ってたから、もう開かな――」

がちゃ。

半「…い…?」
全『…え、』

ギ、ィイイ――…

「ひっ、」



ぎゃあああ!
(悲鳴は、学校中に響いたという)(咄嗟に閉めた数分後、扉は何事も無かったかのように閉まっていた――)
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