□三角の相互依存
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「ねぇ晴矢」
「ん?」

掛けられた声に晴矢は振り返る。
心配そうな表情をした、相変わらず顔色の悪い幼馴染。

「最近風の様子が変なんだけど…心当たり無い?」
「…此間、久しぶりに手の大きさ比べたんだよ」

その言葉にヒロトがはっと目を瞠る。
晴矢は瞼を伏せた。

「もしかして、」
「…俺のがでかくなってた」
「…男女の差、出始めたんだ」
「ああ」

重々しく頷く晴矢。
ヒロトは唇を噛んだ。

「風の奴、すっげぇ痛そうな顔した」
「…うん」
「すぐ無表情に戻ったけど、一瞬泣きそうに顔歪めてた」

あの表情が、瞼の裏に焼き付いて離れない。
酷く哀しげに儚くて、今にも脆く壊れてしまいそうな…。

「大丈夫だよ」
「………」
「風が僕達だけを名前で呼んで、僕達だけ名前を呼ぶのを許して、僕達の領域に誰の侵入も許さないで、…誰かが風を盗らなければ、大丈夫」
「はんっ!誰にやるか。風は俺らのだ」
「うん。僕も、絶対に盗られたくない」

ずっとずっと、このままでいたい。
特別な関係。
友愛じゃない。親愛じゃない。恋愛じゃない。
互いに抱く異常な依存。



三角の相互依存
(何故、私だけ女に生まれてしまったのだろう…)(嫌だ、離れたくない、境界線を引かないで――)
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