□フリーダム!
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事の発端はもう忘れた。
ただ、始まって数秒しか経過していないこれが早く終わるのを待つばかり。

誰からか回って来ていた番号をふってある割箸。
用意周到にも程が有るだろうと、比較的冷めてる何名かが呆れた眼差しを向けた。
ついでにさっと部屋の隅を陣取り『不参加』オーラを撒き散らす。
けれどそれを逃がすようなマックス様じゃない。

「あ、不参加は無しだから!もし逃げるならこの特製ジュース飲んで貰うからね☆」

そう言ってドン、とテーブルへ置かれたそれに、否が応でも全員の頬が引き攣った。
何だあの色。
特大ジョッキの中に並々と注がれているのは、黒と紫と深緑と赤が混じったような液体。
ずざざっと距離を取った面々に、地獄への片道切符を高らかに宣伝する。

「じゃん!美味しいものを作れるからこそ、まずい味をどう出すかも御手のもの!エイリア学園が誇る五大主夫、ディアム・ゼル・フロスト・グレント・コーマ合作ミックスジュース〜!」
「名前と実態が一致してねえ!!(つかグレント!?)」
「大体ミックスにも程が有んだろ!!」
「一体何混ぜたんだマックス!!」

すかさず見事なツッコミを披露した南雲・染岡・風丸の三人に、マックスはぐるりと振り向いた。
にっこり。素敵な笑顔で。

「教えて欲しい?」

あ、いえ、いいです…とハモった三人に非は無い。



「ささっ、皆良いー?」

そう言うマックスに異議の申し立ては無い。
勿論全員参加である。
当たり前だ。
いつもの可愛らしい笑顔で「逃げても地の果てまで追いかけて捕まえて逆さ吊りの体勢で一気飲みの刑だからv」とか言われてみろ。
逃げれるか?…無理だ。
あんな液体、誰も体内に入れたくはない。
参加した方が無難だ。遥かに安全だ。
くじが全員の手に行き渡ったのを確認して、箱を床へ置く。

「せーのっ」
『王様だーれだっ!』

独特の緊張感。
破ったのは、染岡の声だった。

「おっしゃあ!オレが王様だ!!」

歓声を上げた彼の右手には、正真正銘の王冠マークが描かれた割箸が。

「初っ端だしな…んじゃ、在り来たりだけど三番と九番がポッキーゲームだ!」

皆が一斉に手元のくじの番号を確認する。

「俺じゃないぞ」
「俺も違う」
「三番あたしー!春奈は?」
「私も違いますね。…塔子さんと、あと九番誰ですか?」
「………ううっ…」

一瞬の沈黙。

「…立向居、お前か?」
「は、はい…!」

上擦った声と真っ赤な顔で頷く。
右手に持つのは正真正銘[九]の割箸だ。
そんな立向居(というか思春期男子)の心など分かる筈もなく、塔子はポッキー片手に立向居へと近づいた。

「よしっ、やるぞ立向居!」
「ぅ…ホントにやらなきゃダメですか…?」
「ダメだ」

即答する王様にぐっと目を瞑る。

「ぅうう…っ…はい…」

ごくりと生唾を飲み、かなり緊張した様子で恐る恐るポッキーの端を齧った。
因みにポッキーの出所はニヤニヤと面白がっている不動と、まさかの夏未である。(な、夏未さん…!?)(偶にはこういうのも面白いわね)
結果としてはあと少し!ってところで折れてしまった。
塔子は気にせずぽりぽりとポッキーを食べ、立向居は心底安堵していた。

「やったボクが王様!十五番!外行ってナンパ(逆ナン)して来て!!」
「えっ何それすっごく面白そうじゃん!誰誰!?」
「…私」
「「え゙」」
「ちょ、ちょっと待て風介にナンパなんか出来ると思うか!?」
「思う!!」

勢いよく立ち上がって抗議する南雲に、これまた何故か自信満々に頷く照美。

「風介の誑しはダイヤモンドダストの子達限定だよ!?」
「おいヒロトそれはどういうことだ」
「だからこそさ!さぁいってらっしゃい!!」
「無視するな…ってちょっ――!」

髪を後ろに払い除けるという無駄な演出をしてから、照美は涼野を外へほっぽり出した。
結果:大勢の女の子を連れてきた。(涼野と離れることを渋る彼女達には基山が丁重に応接し帰ってもらった)

そんなこんなでゲームは続いていく。
もう悲鳴やら何やらはお構い無しの無法地帯と化していた。

「十番、影野の素顔を写メって来い!」
「ぅええーっ!ちょ、南雲!それ地味に難しい!」
「変更は無しだかんな!」
「えええー…て、その影野が何処だ?」

きょろきょろと辺りを見渡す十番の土門。
物凄くナチュラルにスルーされた影野は体育座りで暗雲を背負った。
隣にいた栗松がそれとなく慰めの眼差しを向けた。
結果:落ち込んだ影野が意地でも見せなかった為未達成。(今必死で土門が機嫌を取っている)

「初めての王様っスー!じゃ、じゃあ一番の人、小さくても良いからピラミッドを作ってくださいっス!」
「俺か…壁山、何でも良いんだな?」
「?はい、ただピラミッド作ればOKっス」
「そうか、わかった。…ピィーーー!!」
「あ、」
「まさか」
「!!」
「きゃー可愛い!」

鬼道の指揮の下、皇帝ペンギンによる可愛らしい青いピラミッドが出来あがったり。(女子に大人気だった)

「十七番!鬼道のゴーグルとマント着用!」
「お、俺か。うっし!おーい鬼道、貸してくれ!」
「…。まぁ、しょうがないか」
「さんきゅ――」
「ダメに決まってんだろドピンクサーファアアアアアア!!!」

綱海が鬼道のゴーグルに手をかけた処で佐久間が乱入して来たり。(そのすぐ後に源田が引き取りに来た)



フリーダム!
(あはは、いつ終わるのかな?)(もう、帰りたい…!!)
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