しるくはっと

□02.暗闇のどん底で見つけたモノ
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薬のにおい。


柔らかいベット。


暖かいひだまり。


小鳥のさえずり。


目の前に広がるのは、白い白い空間。


ここは、どこだろう。

ふわふわとする意識の中、私は起き上がろうと、腹筋に力をいれる。


「…いっ!!…」


お腹が痛くて起き上がれない。


「起きましたか。
良かった…安静にしてて下さい」


男性だろうか、声のトーンが低い。


「ぁ、あの…」



上手く出せない声に苦戦しながらも、私は話を切り出す。


「ここは、どこでしょうか。
自分はどうしてこんな所に…
ステージの上に立っていた気がするのですが」

「それは…覚えていませんか?」


質問したつもりが、されてしまった。

視界がぼんやりと白もやのように霞んで、男性の顔を見ることは出来ない。
だけど男性が被っている長めのシルクハットだけは、見えた。


「…はい」


本当に、覚えていない。
いつものように、音楽にのせてジャグリングをしていた。


それだけ、でしょ?


「…貴女がジャグリングをしている時、貴女の腹部に矢が刺さりました」


矢が?

でも、なんで?


「…その、
私を打った、人は…」


「…まだ、見つかっていません」

「そう、ですか」


何のために、私を打ったのだろうか。
私を打って、どんな利益があるの?
大体、何故今矢なのだろうか。拳銃の方が何かと使い勝手が良い筈なのに。
いろんな場合を考えてみたけど、どれもしっくりこない。


「あの…みんなは」


少しの、沈黙。



「…貴女を置いて、天国に旅立たれました」



嘘、でしょ?





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