あなたと

□15,記憶の底の其処
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 何も聞こえない
  何も見えない
   何も感じない


記憶の底の其処





転入生がやってきたホグワーツは大盛り上がりだった。
才色兼備で、一目置かれる存在でもあった。
リリーまでもが「気になる」存在ななか、フレアはてんで目にもとめない。彼女は一週間分の授業を理解するのと同時に、吐き気のする程ある課題におわれていたため、そんな余裕少しも無いのだ。


「ふぅ…」


どれだけやっても終わる気がしない。
少し一息入れようと、先程リーマスがマグルの水筒に煎れてくれた紅茶を飲む(移動するときに良いでしょ、とリーマスに持たされた)。ここで彼なら砂糖が紅茶の中で飽和状態になるまで入れるだろう。
あれ、ここって飲食禁止だったっけ?


「お、やってるな」

「シリウス…」


全然だよ、と溜め息をつくフレアの前に、にやけ顔のシリウスが座る。例の一件から、シリウスとより仲良くなった。


「どこにも居ないから、ここじゃないかって思ったんだ。
しっかし…随分と奥にいるな」


フレアが居るところは図書室。従って、会話は慎まなければいけないのだが、奥の奥なのでマダムピンスに咎められることはあるまい。
さらに誰も気付かなそうな場所に位置しているため、静かに勉強が出来るのだ。


「穴場でしょ、ここ」


あの時…ホグワーツ脱出計画を立てていた例の謎の部屋で勉強したいのだが、何故か扉があった場所は壁で、ノブなど何処にも付いていなかった。


「あ、ここってどうやるの?」
「どこだ?見せてみろ」


そういうシリウスに、フレアは信じられない、といった風に眼差しを向ける。


「あ、これか。えっと…羽ペン貸してくれ」


と羊皮紙の開いたスペースにシリウスはサラサラと解説とともに書いていく。
わ、分かりやすい…。



「シリウスって…頭良かったんだね」


と感嘆の声をあげるフレア。
シリウスは、まぁなと少し照れながらも肯定した。自覚はあるのか。


「あ、ここ違うぞ」

「え、嘘!?どうやるの?」


まずはだなー、と先程と同様にして、羊皮紙に書いていく。
勉強が出来るなんて、聞いてないよ…。
その後もシリウスとの勉強会は続き、残る課題もあと少しとなった。


「ありがとう、シリウス。分からない所があったらまた聞いても良い?」

「あぁ、勿論だ」


良かった、と満開の笑顔を見せるフレア。そんなフレアにシリウスは、やはり頬に熱が集まるのを感じているのだった。










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