修業編
□7.初恋
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リザはびっくりした様にもう一度ロイを見る。
ロイは照れくさそうな顔で前を向いている。
リザも真っ赤になりながらも、繋いだ手をそっと握り返した。
寄り道と言ってもなんてことはない、家の近くの少しだけ景色を見渡せる丘に二人はやってきた。
ロイは一人きりで考え事をしたいときによくここへ来るのだ。
静かで、鳥の鳴き声や木々のざわめきが遠慮がちに聞こえてくる、気に入りの場所だった。
ロイとリザは草の上に隣り合って座る。
暖かくて、そよ風が吹いている。
草の青い、良い匂いがした。
「寒くない?」
リザは首を振った。
「あったかいです。…こんな場所があったんですね。」
リザは幸せそうに言う。
手は繋いだままだった。
どちらとも手を放すきっかけがなくなってしまったのと、手を放したくないのと両方だった。
「リザ…。」
「マスタングさん。…葉っぱが…」
ロイの頭に小さな葉が風に吹かれてとまった。
リザは繋いでない方の手で葉をとった。
その時リザの瞳は、ロイの双黒の瞳に捕らえられてしまう。
リザは葉を手に持ったまま、ロイの瞳を見つめていた。
深い黒…なんてきれいなんだろう。
リザは考えていた。