修業編
□15.ロイの苦悩・秘伝の完成
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…そうだろう。
今更訴えたところで、家族が帰ってくる訳でもない。
しかし…。
ロイはギランの横顔をもう一度見る。
どこか疲れたような、諦めたような表情。
それは普段からギランが時折見せる表情でもあった。
しかし…さっきリザにと話していた時、痛切に『どうにかしてやりたい。』と言う気持ちが裏側にあるのを感じた。
だから、あえて提案をしたのだ。
ギランは溜め息をついて言った。
「ただの昔話だ。…忘れてくれ。」
ギランの言葉にロイは頷くより他なかった。
ギランは、修業後ロイが軍に志願するつもりだということを知っている。
しかし、その事をついても何も言わなかった。
少しの沈黙の後、ギランは座りながら持っていたクッションを枕にして上を向く。
「マスタングは…、家族は?」
「家族はいない。両親は私が小さいころ亡くなったらしい。…両親の記憶もない。」
ロイの答えはさっぱりとしたものだった。
「そうか…。」
ギランのなんとも言えない表情。
「じゃあ、家族が死ぬ時に立ち会ったことはないんだな。」
「…そうだな。」