修業編

□17.別れの約束
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気付けばリザの手は止まり、捻った蛇口からは勢いよくお湯が流れ出ていた。

リザはゆっくり蛇口を回してお湯を止める。

蛇口に手を置いたまま、リザは唇を噛み締める。

目の回りが熱くなり、まばたきをすると涙がこぼれ落ちた。





…決めていた事なのに…。

リザは涙を手で拭うと、無理矢理泣くのを止めようとするが、次から次へと涙はこぼれ落ちていく。

弱すぎる自分を、心の中で悪罵する。

決めていたことなのに、今更何を泣くことがあるのか。

泣くくらいなら最初からロイの気持ちを受け止めなければ良かったのだ。

自分の気持ちに気づかないふりをしていれば良かったのだ。

…でもこの短い間だけ、…ロイがこの家に居るほんの短い間だけ、自分に素直になり、ロイの気持ちを受け止めることに決めた。

それならば、去っていくロイの背中を笑って押してあげるべきなのだ。

昨日の夜、ロイが見せた顔を思い出す。

…思い悩んだ顔。

彼はきっと迷っている。

余計な迷いは要らないのだと言ってあげなければならない。

優しい彼は、弱い私までもを背負おうとしてしまうから。
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