士官学校編

□30.彼を愛した人達
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リザは自分のテントに帰ると、鏡に向かった。

スティングレイの血のついたピアスを耳たぶに押し当てる。
ピアスホールの無いリザの耳たぶに鋭い痛みが走る。
彼女の薄い耳たぶに、ピアスはプチリと音をたてて貫通した。

リザの新しい血とスティングレイの血が混じり合う。

頭の両側から痛みと熱をどくどくと加えられているような感覚がした。
血液が流れる音を感じた。

生きている。
私は生きている。

目の前には情けない顔の女が居た。
泣き腫らした目をしていた。
リザはそんな女の顔に苛立ちを感じる。
そんな顔をしている時ではない。

彼女は目を瞑る。
…そして昔を思い浮かべる。
目を開ける。
銃を取り出し構える。
そして引き金を引いた。

銃声が響き渡り、目の前の鏡は粉々に砕け散った。
破片が飛んで、リザの頬に新たな傷を作った。

つうと血が流れてリザの胸に落ちた。





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