士官学校編

□3.頑なな心
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ある日の昼休み。
士官学校の学生食堂にて。
生徒達にリザ・ホークアイについて尋ねてみる。

男子生徒はだいたいその名を聞くと何故だかちょっと嬉しそうになる。

「え?彼女ですか?ちょっといないくらい可愛いですよね!」

「でも高嶺の花ですよね。」

ちょっと溜息。


女生徒に聞いてるみると、大抵は不機嫌になる。

「何でそんなこと聞くんですか?…私、彼女の事はよく知らないので。」

これは良い方。

「嫌いですね。なんか見下されてる感じがして。
なんで皆、彼女を気にしてるのかしら。」

はっきりした女生徒はきっぱりと言う。

そこそこ美人で目立つタイプのコに多い。

そこで試しに言ってみる。

「君の方がずっと美人なのにね。」

すると彼女は一気に上機嫌になる。

今までの不機嫌さを隠すように微笑んだ。

その変わり方に思わず吹き出しそうになるくらいだ。

…全く。
他人の尺度で自分の価値を決めちゃあいけないよ。


「きっとリザ・ホークアイは、内勤志望の私達の事なんて、軽蔑しているんですよ。」

もう一人の女生徒が言った。

やれやれ。
…そんな事はないと思うけど。




やがて休憩時間が終わり、辺りに生徒達はいなくなる。

ガランとした食堂の窓際の隅の席。

スティングレイは残りの珈琲を飲みながらぼんやりしている。

…春だっていうのに、いつまでも冷えるなぁ。

スティングレイの薄青の瞳に、窓に当たる雨の影が映る。

彼は窓越しに、雨でぼんやりとしか見えない曇り空を見上げていた。
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