士官学校編
□8.教えの意味を
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その後、やはりスティングレイは校長室に呼び出され、急にリザとレベッカは二人きりになる。
リザとレベッカの間に少しの沈黙が訪れた。
「…レベッカ。ありがとう。」
リザは頬の傷跡が痛々しいままの顔で、控えめに言う。
レベッカはその素直な言葉の響きに、自分の選択が誤っていなかったことを感じる。
試しに聞いてみる。
「…何に?」
するとリザは鳶色の瞳を一瞬伏せて、そしてレベッカの目を再び見る。
「…私を見捨てないでくれて。」
…見捨てないでくれて?
リザは美人で成績も優秀な優等生。
常に凛と一人で真っすぐに立っている。
そんなリザが発した言葉とは思えずにレベッカは少し驚く。
しかし、そこにリザの素顔が見えた気がした。
…不安なのだ。彼女もまた。
「素直じゃないと思ったら、今度は素直すぎて照れるわね。」
レベッカが言うとリザは少し赤い顔をして、困った様な表情をし、表情を取り繕おうとする。
…もしかして、これがいつもの無愛想な表情に繋がっているのかしら。
「リザって、意外に不器用なのね?」
「え?」
レベッカの言葉にリザは聞き返し、いつものポーカーフェイスはすっかり崩れて、リザの顔はとうとう真っ赤に染まる。
レベッカはそのリザの可愛さに思わず笑ってしまう。
やはり自分は何だかんだ言いながらも、彼女の見た目や雰囲気で何か決めつけていた部分があったのかもしれない。
レベッカは心の中で認めた。レベッカは笑って話題を変える。
「私と友達になったからには、イイ男を見つけたら紹介してね!リザ。」
「イイ男って…」
「半端な男はダメよ!!例えば…、あの有名なロイ・マスタング少佐くらいの男じゃないと!!」
ついでに今一番旬の有名人の名前を出してみる。
レベッカはリザの事をあまりミーハーではなさそうだと思っていたのだが、予想とは反し彼女は少し驚いた顔を見せた後、先程の名残だけではないだろう少しだけ頬を染めた。
「あら?リザもマスタング少佐ファン?」
「ち…違うわ!その…。あまりよく知らないし。
そうだ、スティングレイ教官は?」
レベッカの気をそらすようにリザは言う。
「確かにイイ男だけどね。
女生徒からの人気もあるし。
現役の頃は狙撃のかなりの名手だったそうだしね。
銃火器を扱う者にとっては殆ど伝説と言ってもいいくらいの。」