士官学校編

□9.スティングレイの過去
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…助けてくれ!!

助けてくれ!!

遠く、スコープのレンズ越しに見える友の姿。

あの距離では、その声は聴こえなかった筈だ。


…だが記憶の中で、何故か友人の叫び声はどの記憶よりもはっきりとしている。

助けてくれと叫ぶ友の声。

…そう俺はその叫び声をこの目で見ていたのだ。



あの日から親友の悲痛な叫び声は耳から離れない。…否違う。目の裏側に焼き付いて離れずにいる。

もし今この右腕が動いたら、この右手は間違いなく自分のこの目をくり抜くのだろう。

…あの日、そうすることが叶わなかったこの右手は…。





――…リザの怪我もすっかり治り、スティングレイの謹慎も解ける頃。

以前の訓練の失格者による特別訓練が始まった。
場所は中央から離れ、西へ。

ウェストシティーから少し南へ向かった所にある山岳地帯だ。

いわゆる高所訓練。
普段と体調が違うことを考慮しなければならない。

特別訓練とは、三日三晩の間野外にテントを張り、戦地での野外活動を想定し訓練を行う。

参加者は8人。

昼間は腕立て、腹筋等に始まる基礎体力作り。
残りの時間はひたすら行軍。

夜はテントで仮眠。
交代で見張り番を想定した起立訓練。


特別訓練に引率する教官は、スティングレイと、ダレン教官という中堅の教官だ。

ダレン教官は真面目で、平等。
模範的で、高い評価を得ている教官である。

融通がきかないと有名だが、信頼はおける。





リザとレベッカは他の生徒に混じり、訓練を黙々とこなす。

スティングレイも特別訓練中は、普段の親しげな様子も見せずに、一教官として振る舞っていた。


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