修業編

□1.帰る処
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熱い交わりの後、二人は何も身につけないまま、狭いベッドの中で眠りにつく。




二人は、深く深く眠る。


ロイは、リザの柔らかい髪に顔をうずめ、両腕はしっかりリザの体を抱いている。
一方リザもロイの腕の中で安心しきった赤ん坊の様に体を丸めて眠っている。

軍人である二人が、普段こんなに深く眠ることなどない。

常に警戒していなければならない職業柄ということもあるが、




イシュヴァールでの戦争の後遺症が二人の精神を蝕んでいる。

それが睡眠を容赦なく妨害する。

例えば戦場で自分が焼き殺した人々の顔が順番に現れる夢。

「恨みます。」

ロイはあの言葉を生涯忘れられないだろう。



例えば頭を撃ち抜かれて飛び起きる。

そしてひんやりとしたベッドの上で自分の頭を抱え、夢だと自分に言い聞かせるが、しばらくの間激しい動悸の中、頭が混乱して動くことができない。

例えば、戦友が死んでいく姿。

例えば、自分の死体が焼け野原に無造作に転がっている風景。



…そんな夜をすごしている。

イシュヴァール殲滅戦以来、二人とも悪夢を見ない夜はなかった。

だが、二人での夜は違う。
二人はこれ以上ないくらいに密着して眠る。


深く深く。


ここだけがお互いの帰る処であると。

ここだけが心安らげる場所なのだと。

ここだけが、罪を許される場所なのだと。



月明かりが死んだように眠る二人を照らす。

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