修業編

□3.もう一つの朝
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リザがドアを閉めた後、ロイはゆっくり目を開けた。

とうの昔に目は覚めていた。

さっき髪を撫でられた時は思わずリザの腕を引っ張り寄せてしまいたい衝動に駆られたが…。

…寝たふりをしていたのは、起きてしまったらそのままリザを帰すことなどできなくなってしまうからだ。

そして、その寝たふりにリザが気づいていたこともわかっていた。



二人は恋人同士という訳ではない。

時折二人で会って、共に夜を過ごすこともあるが、それ以上にはならないように二人とも細心の注意を払っていた。

愛し合っていることは二人ともがわかっている。

でも、二人はそれ以上にお互いを必要としていた。

――いや、彼女を必要としているのは私の方か…。


ロイは右手で自分の目を覆う。

朝日が眩しくなってきていた。



国を変える。


私が命を懸けてやるべきことだ。

私の副官として、命を預けることができるのは彼女以外に考えられない。

そして、私が道を誤った時に私を殺すのもまた、彼女でなくてはならない。

彼女に撃たれて死ぬ。

そんな甘美な誘惑に惑わされるような日もあるが…。




ただの恋人以上の存在。



もし、彼女を恋人として愛するということになれば、私は彼女が軍人でいることに耐えられなくなるだろう。

片時も私から離れないように、縛りつけて放さないだろう。

ましてや生死を分ける戦場になど…行かせるわけがない。




その私が彼女を戦場に赴かせる上司だというのだから笑ってしまう。



師匠の家にいたころのリザを思い出す。

あの時、リザは只のかわいい女の子だったのに。






今日の夜会う女を決めなければならないな。

ため息と共に考える。

誰でもいい。

リザと夜を過ごした後は違う女でも抱かないと、リザへの気持ちが膨れ上がってしまう。

彼女はいつものポーカーフェイスで私を見るだけだろう。


いつもリザは、今日のようにきちんと帰って、ホークアイ中尉に戻る。

おそらく、今日は必要以上に仕事を詰め込んでいることだろう。




いつか―――、私が只の男として彼女を抱きしめられる日が来るだろうか?


そんな未来の想像さえ、上手く描くことができない。

代わりに、若かったころの私とリザが笑っている姿が思い浮かんだ。

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