修業編

□4.仕事
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ロイが執務室の席に座ったのは、いつもよりだいぶ早い時間だった。

始業の時間までまだ時間がある。

結局目が冴えてしまい、リザの香りの残る部屋には居たくなくてつい早く来てしまったのだ。



いつも早めに来ているはずのホークアイ中尉が見当たらない。

ロイを避けて射撃場にでも行っているのだろうか?



退屈なので新聞をパラパラめくっていると、ノックの音がして返事をする間もなくハボックがくわえ煙草のまま入ってきた。

「はよーッス。」

ノックの返事を待たずにドアを開けるな!
とか、ここの部屋は禁煙だ!
そもそも上司の前でくわえ煙草とは何事だ!
とか、そのやる気のかけらも感じられない顔はなんだ!

とか小言を言いたくなる。

だが、ハボックはまるっきりいつもどおりなだけなのだ。

いつもはまるで興味がないから何も言わないのだが。


今日に限ってなんだと思われなくなくて、ロイは出かかった言葉を飲み込んだ。

代わりにハボックを睨みつける。

「何だ?」

挨拶を返す代わりに用件を聞いた。

ハボックは――こりゃ今日は機嫌悪いな。――と思いながらも、特に態度は変えない。

――原因はわかってるさ。

ハボックは軽いため息とともに煙を吐き出した。



「今日はホークアイ中尉は、前から頼まれていた新人研修の講師の方に行くそうッス。だから今日は俺が中尉の替わりってことで。」


「……。」


ロイは嫌な顔をしてハボックを見た。

俺だってイヤですよ。

という顔をハボックはしている。



「…で、これが今日の予定。これが今日提出の書類。で、これが提出期限が過ぎているから急ぎの書類ッス。」

バサバサと書類を机に置いた。


で、いつもなら中尉の淹れてくれるコーヒーが添えられるのだが…。

「ってことで。」

早く立ち去りたくて仕方ないハボックは早々に引き上げる。

ロイも野郎の淹れたコーヒーなど飲みたくないので、突っ込みはしなかった。

――ああ、嫌な1日の始まりだな。

ロイは積み上げられた書類をみてウンザリした。



ハボックは執務室のドアを開けて、出て行きかけながらついでの様に言った。

「……中尉かなりスケジュール詰め込んでたみたいッスよ。」


「そうか…。」

ロイは書類に目を落としながら返事をする。


少しの沈黙。


ロイに何も言える言葉はない。
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