修業編

□8.幸せ
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夕食を食べ終えた後、師匠は席を立った。

「リザ、ご馳走さま。」

「はい、お父さん。」

お互いに無口な親子はいつもと同じやりとりをする。

師匠は食事が終わると早々に自分の部屋に行ってしまった。

リザも立ち上がり、カチャカチャと皿を片付けだす。

「ご馳走さま。手伝うよ。」

ロイも立ち上がる。

「…っ、いいですよ。…マスタングさん、もう休んでください。」

リザは慌ててロイの手から皿を取る。

「これくらい手伝うよ。」

ロイは言うが、リザは首を振った。

「いいんです。マスタングさんにそんなことさせたら、父に怒られます。」


「そうかなぁ。」

もっと甘えてくれて構わないのに。

ロイは頑なに断るリザを見て思う。

流し台で洗い物を始めたリザの近くに椅子を引き寄せてロイは座った。

「今日のシチューは旨かったよ。」

洗い物をするリザの後ろ姿を見ながら、ロイは言った。

「良かったです。」

皿を洗う水音にかき消されるくらいの声でリザは言う。

彼女が嬉しそうにしているのは顔を見なくてもわかった。


「私が君の料理で一番好きなのは、ハンバーグだな。…でもこの前のトマトのスープも旨かったなぁ。」
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