修業編
□9.謎
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深夜、2時近い時間。
春とはいえ、夜中は冷えた。
上着を着ているが少し寒い。
ロイは自分の部屋で文献を読んでいたが、どうしても書庫にあるもう一つの文献を読みたくて、どうしようかと迷っていた。
書庫は師匠の部屋のすぐ隣だ。
こんな時間に音をたててしまっては迷惑だろう。
…と思うが、一度読みたいと思ったらどうにも気になって仕方がない。
もう一度時計を見る。
当然時間は変わっていない。
よし。
音をたてないように行こう。
こんな静かな夜更けに音をたてないで、というのも少し無理があるように思ったが、元来熱中してしまうとどうにも止まらないという性格だった。
そっと廊下にでるが、廊下の電気はつけないままにしておく。
月が明るい夜だから、電気がなくてもさほど困らない。
ロイの部屋は二階にあり、書庫は一階の端だった。
パタン、と静かに閉めたはずのドアの音も妙に大きく聞こえる。
静かに階段を降りていく。
昼間とは違う夜の匂いがする。
昼間のからりした空気とは違って、夜の空気は少し重く、しっとりとしていた。
…と、パタンと下からドアを閉める音がした。
こんな時間に?
ロイは警戒する。