修業編
□28.暗号の解読
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二人はホークアイ家に戻った。
古くて広い家。
玄関から入った瞬間からもう空気が今までとは違っていた。
主の居なくなってしまった家とは、こんなにも寂しさをにじませるものなのか。
リザは自分の部屋で喪服から軽装へと着替えをすませ、ロイの部屋へ行った。
ロイの部屋はストーブで暖められていて、いつものロイの匂いがする。
リザはホッとした気持ちになって、やっと肩から力が抜けるのを自分で感じる。
狭い部屋に家具は机とベッドくらいしかない。
所狭しと本や勉強道具が置いてあり、散らかっている訳でもなく、かと言って整理整頓されているわけでもない部屋。
ロイが普段から好んで使い続けている物達、ロイが身に付けている物達が構成している空間。
そこでは、一歩入ればまるでロイの腕の中にいる様だった。
今までも、時々リザはここに来ては、ギランも含め三人で話をしたり、…時にはロイと二人きりになる時もあった。
自分の部屋よりもむしろリラックスできるこの部屋が、リザはとても好きだった。
机の椅子にはロイが座り、リザとギランはベッドを椅子代わりに座るのがいつもの定位置である。
ギランが毎晩のようにロイの部屋に勉強に押し掛けていたのを少し羨ましく思ったものだ。
そういえば、ギランもこの部屋をずいぶん気に入っていたようだった。
部屋に招き入れられたリザは、いつものようにベッドの端に座る。
ロイもいつもの様な軽装に着替えていた。