士官学校編

□7.怒
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スティングレイは自分で尋ねたのにも関わらず、リザの答えなどたいして聞いていなかった。

「ディオだな。」

「…。違います。」

ディオを庇うわけではなかった。

だが今のスティングレイに話すには危険な気がしたのだ。

今彼が放っている怒りが、ピリピリとリザの頬にも伝わってくる。

だがそのリザの抵抗も空しい様だ。

何故か既に皆の噂になっているようだし、スティングレイはリザの言うことなど端から信じる気も無いようだ。

「ディオがやったんだろう。」

スティングレイはもう一度言った。

リザはとうとう黙り込む。

それを肯定と取ったのか、スティングレイはその場所へ向かおうと身を翻した。

「待ってください!」

リザは急いで立ち上がり、左足を庇いながらスティングレイを追いかけた。

スティングレイが向かったその場所とは、食堂から程近い、談話室だ。

そこの椅子に座って、ディオは煙草を吸っている。

近くにいる男子生徒に何か自慢気に話している。

「…俺があんな小娘を本気で襲うと思うか?…そうじゃない。俺はな、女って奴はどうしようもなく使えないモノだってことを言いたいだけだ。」

「…だってそうだろう?男なら襲われる心配もないし、少し殴られたくらいで大騒ぎはしないものだ。」

どうやら噂の元はディオ本人であるらしい。

学校内では有名な話なのだが、ディオは軍の将校クラスの人間と深い繋がりがある。

その為、多少のことでは――それが校長であろうとも――、彼をクビにすること等はできないのだ。



この噂を敢えて流したのは、先日校長に注意を受けたことに対する、ディオのこれ見よがしな反抗だった。



リザの声。

「待ってください!」

ずんずんと大股で歩いていくスティングレイに、リザは追いつくことができない。

ディオは自分の方に歩んでくるスティングレイに気がついたようだ。
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