士官学校編

□9.スティングレイの過去
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訓練二日目の夕方、中央から緊急の電話連絡がある。

受けたのはダレン教官だ。

すぐに全員を集め、整列させたダレン教官。

すぐ横に立つスティングレイも、険しい顔をしていた。

「皆。聞いてほしい。内戦が続いているクレタとの国境付近から、クレタの兵士何名かが不法に入国した。」

クレタとはアメストリスの西側に隣接する国で、昔からその国境付近では争いが絶えない。

「その兵士達が、この山岳地帯にある観測所を占拠し、観測所の職員を人質にして立てこもっているとの報告があった。」

俄かに皆の表情に動揺の色が浮かぶ。

「人質の命と引き換えに、わが国と取引をしようとしている。人質解放のために尽力をつくさねばならぬところなのだが…」

ダレン教官は言葉を切り、咳払いをする。

「…今現場に一番近い所にいるのは他でもない私達だ。事態は緊急性を要する。
中央の兵士達がここへ来るまで丸1日かかる。それまでに現場の実状を偵察して来いとの令が下った。」



…『偵察』。



スティングレイの頭に響く単語。

ダレン教官は続ける。

「偵察には私が赴く。スティングレイ教官にはここに残り、この場の安全を確保していていただきたい。」



『…スティングレイ…。』



スティングレイの頭の中で頭の中で声がしていた。




「偵察には俺が行きます。得意分野だ。目の良さにも状況把握能力にも自信がある。」

スティングレイが言うと、ダレン教官は首を横に振った。

「確かにスティングレイ教官は私よりも実戦経験が豊富だ。体力やその他の能力も言うまでもなく君の方が上だ。…だが失礼かもれないがその右腕で偵察に赴かせる訳にはいかない。」
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