士官学校編

□10.スティングレイの過去2
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偵察に赴いたリザとダレン教官は何のアクシデントもなく順調に偵察を終えようとしていた。

「だいたいの状況は掴めたな。これ以上踏み込む必要もないだろう。帰るぞ。ホークアイ。」

「はい。」

観測所は確かに占拠され、クレタの兵士と思われる者達が観測所の職員を人質にしていた。

ダレン教官は必要と思われる情報を集め、そして早々と退去を決めた。

リザからしてみると、もっとより深く情報を集められるのではないかと思いもしたが、どうやらそれはリザの表情に出ていたらしい。

「もっと掘り下げて探るべきだと思うか?」

ダレン教官はリザを咎めるでもなくそう聞く。

リザは正直に頷いた。

「そうかもな。…だが私は軍属ではあるが兵士ではない。士官学校の教官として、生徒に危険が及ばぬようにするのが最優先だ。」

「はい。」

リザは浅はかな考えを面に出してしまったことを恥じ、ことさら真面目に返事をする。

そんなリザに、ダレン教官は珍しく少しだけ笑顔を見せた。

「しかし君はスティングレイ教官の生徒というだけのことはある。君を助手に連れてきて良かったよ。」

「ありがとうございます。」



そして二人は夜の道無き道を帰路につく。

「中央の本隊が訓練場に着くのにはまだ時間がかかる。…暗い道を慌てて戻ることもない。日が昇り始めるまで、ここで待機するぞ。」

夜明けまではまだ時間がある。

ことさら安全策にこだわるダレン教官に、リザは従う。

夜明けまでの時間を待機するのに丁度良い場所を見つけ、そこで何時間ぶりかの休憩をとった。

リザは荷物の中から水筒を取り出して口に含むと、今まで気を張っていたのが少しだけ緩んだ。

「緊張感で疲労を感じないかもしれないが、体は結構参っているはずだ。こんなところでは落ち着かないだろうが、しっかり休め。」

無駄口を一切きかず、淡々と事を進めるダレン教官に、リザは密かに感嘆していた。
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